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設計のポイント
CSS #1 -Case Study SOHO #1(ケース・スタディ・ソーホー)-
この建築は、地方都市に建つ女性クリエーター集団のSOHO
である。
施主は、富山市内において、会議場の企画運営や広告の代
理業務などの会社を営んでいる。会社のメンバーは全員女
性であり、地方都市における女性が働く環境を確立しよう
と、試行錯誤していた。新規事業参入などによるスタッフ
の増加に伴い、これまで使ってきた場所が手狭になったた
め、予てからあたためていたオフィス環境を実現すること
になった。
与えられた主要な条件は、以下のものだった
① 広いワークスペース:スタッフから幅広く、個性的な
アイデアを得る為に、その日の気分で、事務所内の好きな
場所に移動して、仕事ができるようにしたい。
② 立山連峰が眺められるプライベートスペース:原稿作
成など、スタッフから離れて、集中して仕事をする為のス
ペースがほしい。気分転換のためのジャグジーバスと立山
連峰を望めるスペースを持ち、ゲストが来たときには宴会
場としても利用したい。
③ 保育室と安全素材の社員食堂:女性が働く上で最も障
害となっているのが、乳幼児の育児なので、保育園に入る
前の子供を預けられるスペースを設けたい。また、忙しい
ことを理由にコンビニ弁当が続きがちな食習慣から脱出す
る為に、元畑だった敷地を活かし、有機野菜を栽培、調理、
食事できるシステムを考えたい。
その解答として、極めてシンプルなプランが導き出された。
東西軸3mスパンの柱割による鉄骨ラーメン構造による3階
建てとし、1階は保育室、ギャラリー、社員食堂などの福
利厚生スペース。2階はオフィスの中心となるワークスペ
ース。3階は眺望を考慮したプライベートスペースとした。
1階の社員食堂は、南に設けられた畑で、自家栽培した野
菜を用い、調理ができるよう計画され、打ち合わせや、周
辺の住民の寄り合い所としても利用される予定である。
2階のワークスペースは、それぞれの個性を尊重し能率の
よい作業を行うためと、スタッフ外出時のスペース効率を
配慮し、スタッフ各々が執務するのに必要最小限の可動式
仕事机(モバイルデスク)が与えられ、グリッド上に配置
されている柱などに、LAN・電源などの端末を散りばめら
れた。さらに、モバイルデスクを庇付のデッキ(アウター
オフィス)に移動させ、外部でも仕事ができるように計画
された。また、打ち合わせ用の机(モバイルテーブル)も、
モバイルデスク同様固定されず、用途に応じて、打ち合わ
せ環境を創れるよう配慮されている。
3階のプライベートルームからは、富山の心象風景の代名
詞である、立山連峰が望める。決して広いとはいえない空
間を開放するために、インテリアと浴室との視覚的なつな
がりを与え、バリアフリーな外部デッキを設け、一体的な
空間利用が可能となるよう計画した。(藤江 創)






